【オーストラリアの小学校教育】新学期のゆとりレベルが想像の域を超えていた

【オーストラリアの小学校教育】新学期のゆとりレベルが想像の域を超えていた

長い夏期休暇を終えて、豪州の子供たちが新学期を迎えてから1ヶ月が経ちました。始業式もなく、最初の数日は前年のクラスのまま、新しいクラスになっても名簿すらないという、オージー式ののんびりした教育スタイルにまだまだ腰を抜かすこともしばしば。こちらの小学校の新学期を迎える際の留意点をまとめましたので、ご一読くださいませ。


初登校は火曜以降

オーストラリアの学年始めは1月の下旬から2月上旬が一般的。まとまった夏休みの後に学年が上がるという点では北半球の欧米諸国と同様です。

小学校の学年はYear(イヤー)1〜6という呼ばれ方をします。日本で小学校の学年を低・中・高学年とくくるように、こちらでもYear1と2はStage (ステージ)1、Year3と4はStage 2、Year5と6はStage 3という風にまとめられます。1年目のKindergarten(キンダーガーテン:付嘱の幼稚園)を含めて、小学校には合計7年通うシステムです。

こちらでは学期のことTerm(ターム)を呼び、1年は4学期制。最終のターム4以外は学期初日の月曜日に先生のみが登校する日・Development Day(ディベロップメント・デイ)が設けられており、児童たちの登校は火曜日からです。

キンダーガーテンに限っては、初登校日はさらに遅い週の後半で、金曜日に1日登校してすぐに週末・・・なんていう拍子抜けしてしまうシステムです。ほんの5歳の子供たちを初っ端から5日間フルで通わせるのではなく、徐々に学校生活慣れさせていこうという学校側の配慮なのか、全学年一斉にスタートするとオーバーキャパに陥ってしまうからなのかは、筆者もよく分かりません。

いずれにしても、初登校日を控えた週は親の方がソワソワするもので、たった1日通わせるために1週間ずっと待ち続けるキンダーカーテン生のママたちの気疲れは相当なものです。

日々の学習に使うトピック・ブック。表紙を飾るのはカンガルー先生と児童たちです。

備品の準備

学年始めの1週間前ほどに、学校から「Welcome to Stage 1」という件名のEメールが来ました。そこには、登校時と下校時の流れの説明(こちらには学期始めの集団登下校はありません)と、教室内で使用するEquipments(備品)を各家庭から持参してほしいとの旨が記してありました。ステージ1の備品は下記の通り。

①ティシューボックス×2
②キッチンタオル×2
③手洗いリキッドソープ
④美術の授業で使う古い服
⑤手指消毒ジェル
⑥ウェットティッシュ

これは登校時に「先生に渡してねー」と子供に託すか、お迎えの時間に担任の先生にパッと渡してしまえば大丈夫。中にはスルーして何も持ってこない家庭も少なからずあると思いますが、だからといって催促されたりお咎めを受けたりはしません。こういった学校側からの小さな要請はオナー・システムの上に成り立っています。

この他に始業式前に準備すべきものは特になし。強いていえば、古びた制服のアイテムやランチボックスを新調するくらいでしょうか。日本に比べたら、それはそれは気楽なものです。

始業式なしの始業日

日本の常識を打ち破るこちらの常識といえば、学期始めの始業式がないことでしょう。初登校日であっても雰囲気はまるで他の日と何ら変わりません。全校集会も、校歌斉唱も、校長先生からのお話もなし。共働きの家庭の児童であれば、初登校日からビフォー・スクール・ケア(学校構内での始業前の学童保育サービス。朝7時半頃から始まるのが一般的)でお世話になる場合も多くあります。

長女の通う学校は朝8時30時に正門が開きますが、8時55分のベルで担任の先生が迎えに来るまでは教室に出入りすることはできません。クラスごとに決められた場所にスクールバッグを置き、各々校庭で遊ぶのが通例です。登校時間の混乱を避けるために学校からのEメールには、「第1週目は、ステージ1の児童はどこそこにバッグを置いてください」と細かく指示が入ります。

国際色豊かな長女の小学校には、宗教・道徳のクラスも。学期始めに学校から手紙が送られてきて、キリスト教、ヒンズー教、カトリック教、ユダヤ教、道徳(無宗教)、自習の中から選んで回答します。

最初の数日は見慣れた顔と

もう一点、日本の学校との大きな違いは、学期始めの最初の数日間は前年のクラスのままであること。クラス発表は週の後半まで引っ張られるのがオージー式です。長い夏期休暇明けの児童たちに学校生活のリズムに今一度慣れさせて、学習モードに切り替えてもらうために学校側が取る措置だそう。最初の週の学習内容といえば、いじめについての授業や保健の授業など、わりとゆったりとしたものです。

さて、やっとこさ新しいクラスに振り分けられたのは第1週目の金曜日。スクールバックに学校からの手紙が入っていました。そこには

・子供の新しいクラス名と担任の先生の名前
・終業後のクラス集合場所(親が迎えにいく場所)
・担任の先生のEメールアドレス

に加えて、長々とこんなことが書いてありました。

「毎年のクラス分けは大変複雑なプロセスを経て決められたものです。児童の性別、学習レベル、言葉の習得レベル、文化背景、友人関係、学習態度など様々な側面を考慮したうえで各クラス均等にバランスがとれているよう細心の注意を払っています。」

「そのプロセスの複雑さゆえ、本年度のクラス編成はこれで最終決定とします。昨年のターム4の時点で、本年度のクラス分けに関して保護者より特別にリクエストがあれば学校側に申し出るようにとお願いしてありました。お聞きしたリクエストはクラス分けの経過において考慮に入れましたので、2月2日(新クラス振り分け日)以降はいかなるクラス変更もありません。」

丁寧な言い回しでしたが文面から校長先生の並々ならぬ決意、というか闘志が溢れていました。これは、自分の子供のクラスに不満を持って文句を言ってくる保護者をけん制したもので間違いないと思います。俗にいうモンスター・ペアレンツというのは、どこの国にも存在するものなのでしょうか。

この手紙にホッチキスで留めてあったのが、ステージ1のニュースレター。ターム1の行事日、算数と読み書きクラスの学習概要、週に1日あるスポーツデイ(体操着で登校する日)、ライブラリー・デイ(指定のライブラリー・バッグを持参する日)の指定日、そしてステージ1の学年主任の先生のEメールアドレスが記されていました。

名簿がほしい…

ちなみに、新クラスに振り分けられたものの、クラス名簿などは配られません。自分の子供のクラスメートは、1年を通して少しずつできる範囲で把握していくのがこちら流。クラス名と担任名以外の情報は手元にない状態でのスタートです。

仲のよかったあの子はどのクラスなのか?去年からの馴染みの顔は新しいクラスにどれくらいいるのか?自分の子供が学校であったことを饒舌に報告してくれるようならよいのですが、そうもいかない低学年の児童のママたちは概ね極端に少ない情報量に喘ぐことになります。解釈の仕方を変えれば、学校側は保護者がその辺りの知識がなくても問題ないと思っているわけです。

筆者が今年度に入って聞いた話ですが、なんでも昨年の学期末に児童1人1人が「ウィッシュリスト(Wish List)」なるものを書いて提出していたのだとか。翌年も同じクラスで学習を続けたい「チームワークを活かせる」友達を選ぶよう先生よりお達しがあったそうです。6歳の子供たちがそのような指示を守ったか甚だ疑問ではありますが、児童の思いを少しでも汲んであげようという姿勢は好感が持てますね。

とはいっても、仲の良かった2人組が再び同じクラスに入ったかと思えば、引き裂かれた親友たちもチラホラ見かけられ、どのへんをどう判断してウィッシュリストが反映されたのかは謎のまま。日本人児童が固まっているクラスもあり、基準が全く分かりません。

初心者を惑わせるブックカバーの存在

ブックカバーの台紙には、親切に手順も記してあります。

学期始めから1ヶ月以内に、Meet the Teacher Night(ミート・ザ・ティーチャー・ナイト)という担任と保護者の顔合わせ会が夜間に開かれます。そこで1年を通したカリキュラムの説明を受け、その場で質疑応答もOK、教室の観覧も自由にできます。読み書きクラスのボランティア希望日なども、この日出席すればシートに記入できます。

そしてこの晩に渡されるのが、自分の子供が今年使うアクティビティー・ブック(日本でいうジャポニカ学習帳ですね)と、子供のアートワークが施されたわら半紙のようなもの。説明がないとかなり混乱するプロセスですが、これはアクティビティー・ブックにアートワークで作ったカバーを被せて、教室に返却するという「ブックカバー作業」です。

ブックカバーとは、透明でペラッペラで片側になんとなく粘着力のあるシートのこと。スーパーなどで簡単に手に入ります。アートワークの上にこの透明ブックカバーを被せるわけですが、幅が足りなかったり、空気抜きに失敗して表紙がシワだらけになったり、初心者はユーチューブでも見ながら悪戦苦闘すること必至。

先生との顔合わせに遅れて参加した保護者の中には、この説明を聞き逃したうえにアクティビティー・ブックとアートワークを渡されて「へ?これ何?」と目がテンになる人も。筆者も去年は上の学年にお子さんがいる経験者のママに質問攻めしてやっとやり方を把握したものでした。

新学期の時期は、学校の図書館に新しくお目見えした本たちもたくさんあります。貸借りを繰り返しても本の外側が痛まないように、こちらもブックカバーをかける必要があります。そこで学校側は保護者のボランティアを募り、週に1日図書館でカバー作業をしていることも。上手い人は本当に上手いんです。内職が得意な器用なママさんたちはこぞってお手伝いにいくようです。

作業開始!

本格的な学習ペースになるのは2ヶ月目から

さて、唯一の宿題である音読が始まったのは第4週になってからでした。個々の読み書きレベルに応じた本を毎日とっかえひっかえ借りてくるのですが、最初の3週間はこれもなし。子供たちのエンジンがかかってくるのを待っているのか、先生たちが休暇明けのレベル分けのアセスメントにそんなに時間を要しているのか分かりませんが、とにかく最初の数週間はスクールバッグにランチボックスと水筒以外は何も入っていません。

読み書きクラスのお手伝いボランティアが始まったのは第5週。昨年は先生から共有ファイルが送られてきて、自分が来られる日の欄に名前を記入するシステムでしたが、今年はボランティアに手を挙げた保護者の中から先生が無作為に選び、ターム1は曜日ごとに固定されたメンバーに。噂によると昨年はドタキャンする保護者が後を絶えず、苦肉の策で今年のシステムにすり替わったのだとか。

終わりに

新学期が始まってから早1ヶ月強。先生と保護者をつなぐクラスの連絡係も既に決まりました。今月は早速、新しいクラスメートのお誕生日会へのお誘いや、クラスのプレイデートが企画されています。子供同士が仲が良くても親同士は名前も顔も知らないということもありますから、こういう場での交流があると大変助かるものです。

今年のスクールイヤーは始まったばかり。知り合いのママに話を聞くと、やはりイヤー1くらいの小さな子供たちの中には、新しいクラスに馴染むのに時間のかかる子も多くいるようです。ターム1のゆとり教育っぷりには驚くものの、長い1年の始まりだからこそ、ゆっくりしたペースで進むのも決して悪くないのかもしれませんね。

これから就学年齢のお子さんを抱えてオーストラリアに駐在予定の方にお伝えしたいのは、日本のようなカチっとした新学期の節目の雰囲気を学校側に期待すると本当に拍子抜けしてしまいますので、ゆったりのんびり構えてください、ということです。Tシャツとジーンズで迎えるストレスフリーな新学期も、慣れてしまえばよいものですよ。

今年も筆者親子共々良い出会いに恵まれて、有意義な一年になることを願っています。

この記事のライター

ニュージーランドとシンガポールでの生活を経て2009年よりシドニーに居住しています。6・3・1歳の子育て中です。

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