2018年シンガポール紀行③アートサイエンスミュージアムの目玉展示FUTURE WORLD展を遊び尽くす

2018年シンガポール紀行③アートサイエンスミュージアムの目玉展示FUTURE WORLD展を遊び尽くす

マリーナベイ・サンズ内の施設のひとつであるアートサイエンスミュージアム。一番人気の常設展示であるFUTURE WORLD展を訪れてきました。その名に引けを取らず、近未来感たっぷりの展示作品が目白押しで、親子でたっぷり楽しめること間違いなしです。見所いっぱいの体験型インスタレーションを、ゾーン別に詳しくご紹介します。


陰の主役は日本の会社

アートサイエンスミュージアムは、言わずと知れたシンガポールの観光地マリーナベイ・サンズ内にあります。マーライオンの反対側に見える、蓮の花に似たあのユニークな建物といえばピンとくる方も多いのではないのでしょうか。開館は2011年。オープニングにはリー・シェンロン首相も訪れたそうで、国をあげた力の入れ様が伺えます。

2016年3月よりミュージアムの常設展示に仲間入りしたのが、今回ご紹介するFUTURE WORLD展。制作チームに名を連ねるのはteamLab(チームラボ)という名の日本のデジタルコンテンツ制作会社です。

東京大学と東京工業大学の学生によって2001年に立ち上げらたチームラボは、プログラマー、エンジニア、数学者、建築家、絵師、ウェブデザイナー、グラフィックデザイナー、CGアニメーター、編集者など、幅広い分野の専門家が集まった「ウルトラテクノロジスト集団」なんだそう。何だかすごい響きですが、どんな展示内容なのか期待が高まります。

調べてみたことろ、チームラボはこれまでにアイドルグループ・嵐の紅白歌合戦パフォーマンスの舞台演出や、大河ドラマ「花燃ゆ」のオープニングの映像制作を手掛けたほか、海外の博覧会や美術展にも積極的に作品を提供しているそうです。

そんなデジタル・アートの先駆者が満を持してミュージアムに提供した体験型展示作品は4つのゾーンから成り、全部で15つ。FUTURE WORLD展はギャラリースペースの4分の1を占める、非常に大きな常設展示です。キャッチフレーズは「アートとサイエンスが出会う場所(Where Art Meets Science)」。

アクセス

ミュージアムの周辺地図。この日筆者一家が辿ったのもピンクの点線と同様のルートでした。MRTのベイフロント駅も目と鼻の先。

タクシーで「アートサイエンスミュージアムまで」とお願いすると、マリーナベイサンズのコンベンション・センター側で降ろしてくれます。そこからウォーターフロント側を目指してザ ショップス アット マリーナベイ・サンズ(The Shoppes At Marina Bay Sands)を抜ければ、ほんの数分でミュージアムに到着します。案内サインも所々に立っていますので、迷うことはないでしょう。

ザ ショップス アット マリーナベイ・サンズ内には鳴り物入りでオープンした有名なカジノもあります。ミュージアムへの行きすがら出入り口前を通り過ぎましたが、平日の午前中だったせいか閑散としていました。

こちらのカジノ、私達のような観光客は無料で入場できますが、シンガポール居住者は入場料$100とのこと。非居住者が高めの入場料を取られる博物館やガーデンズ・バイ・ザ・ベイとは真逆のシステムです。国民のギャンプル依存や、ギャンプル絡みの諸トラブルを防ぐために国がとった措置なのでしょう。

お金がかかっているのがよくわかる、ザ ショップス アット マリーナベイ・サンズ。数週間後には旧正月を迎えるこの日、建物内もすっかりお正月モードでした。

どこも空いていました。ザ・観光地の雰囲気を醸し出した高級ショップが多く並びます。

さて、ミュージアム前の屋外に出ると、対岸にはラッフルズ・プレイス(Raffles Place)周辺のシンガポール金融街が目の前に広がります。左手にはマリーナ・ベイ・ファイナンシャル・センター(Marina Bay Financial Centre)のビル群。この日はミュージアムのあまりに奇抜な外見に気を取られてすっかり忘れてしまいましたが、目を凝らせば遠くにマーライオンも拝むことができます。

蓮の花をイメージしたミュージアムの1階部分には人口の蓮池が作られたこだわりよう。こちらのコンドミニアムにもよくありますが、建物全体を細い脚数本で支えています。自然災害とはほぼ無縁のシンガポール、設計段階で耐震構造などは考慮しなくてもいいのでしょう。日本ではお目にかかれないデザインの建物を多く目にすることができるのも、シンガポール旅行の醍醐味といえますね。

鉄のかたまりでできた巨大な蓮を支える、細い鉄骨たち。このデザインは手のひらにも例えられるそうで、「指」は全部で10本。各種ギャラリースペースを表したものだとか。

ミュージアム前に広がるのがこの景色。シンガポールの揺るぎない財政力を象徴する、島内随一の金融街です。

いざ建物内へ

エントランスのある1階から地下2階へ下りてチケットを購入します。筆者一家が選んだのはFUTURE WORLD展と大英自然史博物館展(Treasures of the Natural World)の2展示入場券の家族チケット、お値段75ドル。ちなみにシンガポール居住者が同チケットを購入すると、ちょっと安めの60ドル。ここもやはりシンガポール居住者の入場券を安めに設定してありました。

大英自然史博物館展は小さな子供にはちょっと難しい内容でしたので、今振り返るとFUTURE WORLD展のみでも十分だったと思います。

エントランスはこちら。

レベル1のエントランス付近。こちらのリフトか、フロアの両脇にあるエレベーターで地下2階まで下ります。

ミュージアムの公式ホームページには、人気の常設展示であるFUTURE WORLD展には1時間半ごとの入場制限を設けているとの記載がありますが、それほど混雑しない平日には適用されないようです。観光客の数はまばらで、チケット売り場もガラガラでした。

展示は「自然」「街」「公園」「宇宙」の4つのゾーンに分かれています。

自然ゾーン(Nature)

ブラックウェーブ(Black Waves)

まずは自然ゾーンです。真っ暗闇の廊下を歩いて行くと現れるのが、波の打つ様子をバーチャル3D技術を駆使して表現した「ブラックウェーブ」。日本絵画の手法を再現したものだけあって、日本人観光客が喜びそうな作品です。観覧スペースで床に座ってゆっくりと作品を味わいたい人のために、クッションもおいてあります。寝転んでいる人を踏んでしまわぬよう、足元には十分にご注意ください。

水の粒子の動きが実に的確に再現されており、ずっと見ていると夜の波打ち際でぼーっとしているかような錯覚に陥ります。すぐに見飽きてスタスタと先へ進んでしまう子供たちがいなければ、もっと時間をかけて味わいたい素晴らしい作品でした。

ブラックウェーブ。写真では作品の美しさの10分の1も伝わらないのが残念!

滑って育てる!フルーツ畑(Sliding through the Fruit Field)

一見、暗闇に浮かぶカラフルな光を放つ滑り台ですが、子供心をくすぐる仕掛けがいっぱいです。

滑り台をに果物畑に見立てており、滑り下りていく子供を追うようにひとすじの日光が現れます。また滑り台には青色のボール(水の役割)と黄色のミツバチボール(受粉の役割)が飛びまわっており、体とボールが触れるとボールは弾き飛んでいきます。日をやり、水をあげ、受粉させて果物の育成をお手伝いできるというわけです。

果物にボールが当たると、果物が花火のようにパチーン!と割れてそこから種がまかれ、生命のサイクルは続く。。。という、思考を凝らした作り。滑ることに夢中の子供たちがどこまでこのコンセプトを理解したかはいささか謎ですが、ユニークな仕掛けは大人が見ていて楽しいものです。

スイカが砕けていく様子は、スイカ割りを彷彿させます。

パンフレット掲載写真がこちら。結構盛っているような気がするような、しないような。

街ゾーン(Town)

お絵かきタウン(Sketch Town)

滑り台からふと前方に目をやると、壁いっぱいを使ったデジタルアートが。よく見てみるとシンガポール・フライヤーやマーライオン、アートサイエンスミュージアムなどの著名なランドマークをふんだんに盛り込んだ、シンガポールの街を再現したものであることに気づきます。

これは「お絵かきタウン」と呼ばれる作品。まずは壁のそばに置いてある用紙とクレヨンを使って、車やUFO、建物などの塗り絵をします。それを専用のデジタル・スキャナーに通して、再び壁のデジタル・アートを隅々までよーく見てみると。。。自分が塗った絵が立体的になって、街の中を動いているではありませんか!自分の作った2次元の作品が3次元のアニメーションになっているのです。

デジタルアートの街には自由に触れても大丈夫。車に触ると走るスピードや方向が変わります。展示は大盛況で、大きな壁中をところ狭しと動き回る力作たちの中から自分の作品を見つけるのはなかなか大変な作業でした。

なんともカラフルなお絵かきタウン。

小人が住まうテーブル(A Table Where Little People Live)

滑り台の真横にある部屋の中に置かれた、背の低い2つの丸テーブル。何かゴニョゴニョ動いているので目を凝らして見ると、たくさんの小人がテーブルの端をぐるぐると歩いています。テーブルに自分の手を置いて小人の行列の行く手を塞いでみると、小人が自分の手をよじ登って、ピョーンとジャンプして飛び越えるではありませんか。

置く物の色や形で小人の反応は変わります。あまり大きなものを置くと、小人たちが登りきれなくて一時渋滞することも。付属の小道具(木製の小さな丸いお皿、虫眼鏡やマグカップ)をテーブルに置いてみると、雨が降ったり、果物がなったり、火や牛が出てきたり、芸の細かい仕掛けがいっぱい。

小人をお皿の中に閉じ込める、はしごを作って登らせるなど、遊び方は無限大です。小道具を使って愛嬌たっぷりの小人たちとたくさん遊んであげましょう。

幼児でも手の届く高さのテーブルです。

公園ゾーン(Park)

光のボールでオーケストラ(Light Ball Orchestra)

子供たちが転がすのに丁度よさそうなサイズのボールたちが、暗闇の中で様々な色の光を放っています。触れたり転がす度にボール色が変わり、また天井からぶら下がった無数の巨大ボールも数秒ごとに色がころころ変わり、幻想的な空間を楽しむことができます。幼児用のエリアには一回り小さなボールも用意されており、小さなお子さんでも楽しめます。

作品名にもあるように、このボールは色だけでなく様々な音も奏でるのだとか。残念ながら、この仕組みには全く気が付きませんでした。施設内がざわざわしていると、せっかくの音色はかき消されてしまうようです。

お絵かき水族館(Sketch Aquarium)

コンセプトは前述のお絵かきタウンと同じですが、こちらは海の生き物版。自分だけのオリジナル塗り絵作品が、デジタルアートで表現された水中の世界を泳ぐ姿を見つけてみましょう。こちらは3次元にはなりませんが、色を塗られたエイやクラゲが海中をすいすい泳ぐ仕掛け。デジタルアートの餌に触れれば、魚たちに餌やりすることもできますよ。

こちらも力作揃いでした。人面クラゲにしてしまえば、わりと早く自分の作品を見つけられるかも。

宇宙ゾーン(Space)

クリスタルユニバース(Crystal Universe)

天井からぶら下がる眩い無数のLEDライトのチェーンたち。その中の細い廊下をゆっくり歩きます。
「インタラクティブ4-Dビジョンテクノロジー」という技術が駆使されたこちらの作品、自分の質量(mass)と動き(motion)に反応してLEDライトが連動しながら様々な表情をみせるという代物です。作品名の通り、LEDライトがまるでクリスタルのように煌めいてそれは美しい光景です。

スマートフォンと連携して自分の周囲の宇宙(に見立てたLEDライト)の動きをコントロールすることもできるそうですが、この日見かけた来場客は皆さん展示内でのセルフィーに夢中で、クリスタルユニバースのハイテク機能を操っている人はいませんでした。パンフレットの紹介画像のように、展示内に来場客はポツンと2人のみ・・・なんていう設定はあまり現実的ではありません。

使用されたLEDライト、その数17万個だとか。

戻ってきた落し物

展示を後にしてすぐ、上の2人の子供たちがそれぞれ持ってきたぬいぐるみがなくなっていることに気づきました。遊びに夢中で展示内のどこかに置き忘れてしまったのです。すぐさまFUTURE WORLD展の入場口へ足早に戻り、スタッフの方に聞いてみると、ひとつはきちんと届けられていました。

もうひとつを見つけるために再入場の許可をもらい、暗い室内をくまなく探します。落としたと思われるエリアにいたスタッフの方に事情を説明すると、時間をかけてあちこちに連絡を取ってくれました。知らない人に質問するとつれない対応が多いシンガポールですが、ここは観光地だけあって流石の手厚いカスタマーサービスです。

残念ながらそこでは見つけることができず、「1階のビジター・サービスでも問い合わせてみてください」と言われた通り、エントランス脇へ戻って聞いてみると、こちらに届けられていたのです!どなたが届けて下さったかは分かりませんでしたが、あの暗い室内で薄汚いぬいぐるみを拾ってきちんと届けてくれた方がいたこと、シンガポールのモラルの高さに感銘を受けたのは言うまでもありません。

FUTURE WORLD展への入場は一度きりですが、落し物を探すため特例で再入場がOKに。ちなみに、チケットがあれば当日限りでミュージアムへの再入場は可能です。

FUTURE WORLD展と同じフロアにある、リフレクティング・プール(Reflecting Pool)。ボウル型の屋根で集められた雨水が使用されています。雨水はこの後、建物内で利用されるそう。蓮の花型にはちゃんと理由があったんですね。

これから訪れる人へ

最後に、これからアートサイエンスミュージアムへ訪れる方へお伝えしたいことをいくつかご記しておきます。

ミュージアムへの来場は、平日に越したことはありません。展示の数こそ多いものの、他の来場客に揉まれながら体験型展示を存分に楽しむのは容易なことではありません。

筆者一家が訪れたこの日、地元の小学生グループとインドからの修学旅行グループも来ていましたが、常に学生グループの先へ先へと鑑賞を進めていく必要がありました。ただでさえ暗い展示内で室内を走り回る子供たちにもみくちゃにされて、自分の子供たちが迷子になることが心配であったこと、そして1つの体験型展示に人が群がるとどうしても心行くまで楽しめない故です。休日ともなれば混み具合は相当なものでしょう。入場制限を設けるのもうなずけます。

そして、ミュージアムは子供たちにとっては近未来の楽園さながらですが、大人のデートには不向きかもしれません。当記事では紹介しきれなかった、大人が楽しめる素晴らしい展示作品も複数ありますが、施設内の雰囲気はあくまで「子供向け」です。

キャッキャッと走り回る子供たちにロマンチックなデートの邪魔をされたくないという方は、ミュージアムの他の展示会を選ぶことをおすすめします。FUTURE WORLD展に一極集中する分、他は案外空いているかもしれません。

ミュージアム1階にあるファブ・カフェ(Fab Cafe)は軽食とドリンクのみの扱いで、まともなお食事は置いてありません。質の割りにお値段もしっかり観光地価格です。お昼をまたいで来館される予定の方は、ザ ショップス アット マリーナベイ・サンズ内のフード・コートなど、腹ごしらえはミュージアム外で済ませてしまいましょう。

お掃除はどうしているのでしょう。一度見てみたいものです。

当記事でご紹介した展示内容は2018年1月現在のものです。ミュージアムの常設展示は随時入れ替えられており、FUTURE WORLD展にも時おり追加展示がありますので、訪れるたびに新しい発見があるかもしれませんね。シンガポールが織りなす近未来の世界を、素晴らしい体験型展示作品を通してぜひ堪能してみてください。

この記事のライター

ニュージーランドとシンガポールでの生活を経て2009年よりシドニーに居住しています。6・3・1歳の子育て中です。

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