スペインに残したユダヤ人の足跡をたどる! 世界遺産の街ウベダに残るユダヤ人街とシナゴーグ

スペインに残したユダヤ人の足跡をたどる! 世界遺産の街ウベダに残るユダヤ人街とシナゴーグ

スペインの文化を語る時、イスラム文化はもちろん、ユダヤ文化も大事な要素です。フラメンコのメロディーの元になった「アンダルシ」と呼ばれる音楽はユダヤ音楽イスラム音楽のテイストがいっぱい。ユダヤ文化を夢想しながらユダヤ人地区を散策してみましょう。最近、地下にシナゴーグも発見されました。


1492年ユダヤ教と追放

ユダヤ人地区の家には、ユダヤ教のシンボルとも言われるダビデの星が刻まれていました。

古い街にはユダヤ人街が残っています。1492年というとコロンブスがラテンアメリカにたどり着いた年ですが、その年スペインは完全にカトリックの国になるべくユダヤ教徒を国外追放しました。

少しだけユダヤ教とキリスト教の違いを説明します。キリスト教ではお金に関するタブーが多く、例えばお金を貸して利子をとることは禁止です。そのため銀行業に近い金貸し業は全てユダヤ人がまかなっていました。領地をもつ貴族たちは小作人から使用料を受け取り税金を払うのですが、そのシステムが面倒なのでユダヤ人からお金を受け取り、事実上小作人がユダヤ人に借金をしなくてはなりませんでした。おまけに利子が高く、返済がかなり重荷だったようです。本来ならその怒りは領主や政府に行くべきですが、苦しい時ってやはり直接苦しみを与える対象に憎しみが行ってしまうものですよね。そういうわけで、各地でアンチ・ユダヤ人の動きが大きくなり、1492年にユダヤ教とは改宗してカトリックになるか、国外に出るかという選択をしなくてはなりませんでした。もちろん改宗すれば、金貸し業は営まれなくなりますから、それを生業としている人たちは国外に(多くの富と共に)行ってしまいました。

1391年に起きたバルセロナで起きたユダヤ人虐殺byジョセップ・セグレジェス(Josep Segrelles)

カトリックの国になったスペインは富ともうひとつ別のものを失いました。それが科学の発展。キリスト教徒では死体にメスを入れることは禁止です。そのため死体解剖ができませんから、医学の発達も阻止せざるおえません。1492年、富を得られるラテンアメリカにたどり着いたと同時に実はスペインの衰退も始まった年だったと言えます。

アンダルシア、ウベダのユダヤ人地区

ウベダにもユダヤ人地区というのが残っています。こちらがユダヤ人地区が始まる道です。ルネッサンス様式の建物が集まるバスケス・デ・モリーナ広場の一番静かな路地を入るとそこがユダヤ人地区です。

蛇をモチーフにした風通し穴。2匹の蛇が絡み合っています。

オリエンタルなイメージの住所の番号。

ユダヤ文化が感じられる飾り

イエス・キリスト、十字架、聖母マリアのマークが並ぶ。

ユダヤ地区の家で見つけた馬をつなぐ輪っか。

意味不明なんですが、ガイコツマーク。たぶんお墓の場所かと。

ユダヤ人が退去したのが1492年。それから500年以上も経つのになぜこうやってユダヤ地区が存在しうるのかと疑問に思いました。つまりユダヤ人地区には改宗したユダヤ人が住み続けていたのでしょう。そして、キリスト教徒になったとはいえ、ユダヤの文化を維持しながらスペインの地に住み続けていたのでしょう。

地下にあった秘密のシナゴーグ

ごく普通に立てられたアパルトマン


16世紀のユダヤ人の生活を垣間見られるものが発見されたのが2006年です。それは、それまで誰も知らなかった秘密のシナゴーグが地下にあったのです。というのもスペインの家はほとんどが石造りですから、立て直しということをほとんどしません。昔の家の部屋をくぎり壁だけを取り除いてリフォームするので地下を掘り返すということがないからです。このアパルトマンも内部だけ改造して長い間使われいた建物でした。歴史地区は規制が厳しく、駐車場が少ないので、地下に駐車場を作ろうとしたのが発見のきっかけです。掘り起こしてみると中は広い、ほとんど「地下都市」のような状態になっていてびっくり。写真はシナゴーグの入り口です。ごく普通の建物の普通の入り口。

地下はこのようになっています。

入場料4ユーロを払って内部にはいると驚きのスペース。地下にはドアがいくつもあり、かなり長い通路も用意されていました。いざとなったらどこかへ逃げられるように用意されていたのでしょう。ここには7つのドアと7つの井戸がありました。ユダヤ教でお7
というのはラッキーナンバーだったようです。そして宗教儀式に使われる大きな浴槽がありました。どうやら、婚礼前、生理の時、出産のあと、もしくは前などにここで清められていたようです。水の儀式に使われていたということで「水のシナゴーグ(Sinagoga del Agua)」と呼ばれています。

不思議なことに先ほど紹介したユダヤ人地区から離れた場所に存在します。ユダヤ地区では、宗教的儀式をしていないか監視されていたのでしょう。地下道がかなり長く続くので、もしかしたらユダヤ地区から繋がっていたのかもしれません。内部にはユダヤ教、ユダヤ文化に関する文献や瀬戸物なども含む美術品だけではなく、当時のキリスト教やイスラム教に関する資料も大量に残されているそうです。

内部の紹介は下に貼り付けたYouTubeをご覧ください。

結構おもしろいなと思ったのは、地下のこの建物のドアに猫用のドアが作られていたこと。大きな人間用のドアに自動開閉する猫用のドアが付いていたのです。トリビア的なページでニュートンが猫用ドアを発明したという記事が載っていますが、それより以前にユダヤ人によって猫用のドアが作られていたのですね。そしてこの地下に猫たちが出入りしていたということも微笑ましい思いがします。

スペインのユダヤ人の足音を聞きにウベダに行こう!

パラドールからも歩いて行けるユダヤ地区と水のシナゴーグ。暑い夏は特に涼しいシナゴーグでゆっくりできます。

この記事のライター

スペインに住んで18年になります。小さな素敵な町やお祭り、工芸品などスペインらしいスペインの旅を楽しむ情報をお届けします。

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