クリスマスは、もともとキリスト教のイベントとして西欧諸国で祝われていました。それでも、この習慣は徐々に世界的に広まっていって、現代は日本人にとっても、小さい子どもからお年寄りまでみんながよく知る冬の一大イベントとなっていますね。
「現代は」と言いましたが、二十年以上前の私が子どもだった頃も、すでにクリスマスは子どものいる家庭ならまず間違いなくお祝いするイベントとなっていました。
誰もが「12月25日と言えばクリスマス」と知っていて、クリスマスと言えばクリスマスツリー、サンタクロース、クリスマスケーキやプレゼント交換、ソリを引いているトナカイ・・・などなどのイメージを持っていますね。知らない人はほぼいないでしょう。
では、ここからは中国においてのクリスマスをご紹介します。日本と同じアジアでお隣の国でもある中国でのクリスマスに対する意識が日本のそれと全然違って、きっとびっくりしますよ。

とあるデパート前で。2017年のクリスマスツリーです。
従来の「中国人にとってのクリスマス」

お店の人が自らトナカイの電飾を手で巻きつけていました。なかなか綺麗にできていますよね!
私は中国に来て今年で六年目になりますが、確かに来た当初の頃から12月になると大型デパートにささやかなクリスマスツリーが登場してはいました。でも日本と大きく違うなと思ったのは、まずデパートなのにツリーが小さめで、クリスマスソングはほとんど流れていません。時々他の曲に混じって出てくるぐらいです。街中のイルミネーションもほぼありませんでした。
そうです、クリスマスがそれ程一般市民に知られていなかったんです。私が当時住んでいたのは広州市(広東省の省都)の片田舎だった(都心まで地下鉄で約一時間の距離)ということもあるかもしれませんが、クリスマスの雰囲気はほとんど皆無と言って良い程でした。
若い人はギリギリ「12月25日はクリスマス」という認識がありましたが、40代以上の人たちは「クリスマスは聞いたことがあるけど、いつかは知らない。」という感じだったんです。
同じ仏教国でも、日本だったら、都会か田舎かに関わらずクリスマスを知らない人はほぼいないと思うので、こんなにもクリスマスが知られていないことにいくらか衝撃を覚えました。自分にとって「常識」でも、所変わればその常識が全く通用しないということを実感しましたよ。
そもそも多くの中国人は、日本人と比べて結構適当な所があるので、どういうわけか、真夏にクリスマスソングが流れていたりすることもあります。日本と同じ北半球なのに・・・毎回、クリスマスソングが聞こえてくるとつい「オーストラリアか!」と突っ込みたくなってしまいます(笑)
日本では、11月頃から街中にクリスマス関連のグッズが並び始めて、12月25日まで盛り上がって、翌朝から今度はお正月の雰囲気作りが始まりますよね。一気に早変わりするので、これはこれですごいなと個人的に思っているのですが、中国では違います。
中国にも1月1日の元旦はありますが、メインは旧暦の1月1日にあたる旧正月(春節)です。例えば、今度の旧正月は2018年2月16日から始まりますが、それまでずっとクリスマスツリーを出しっぱなしにしているお店が結構あります。
下手をすると、旧正月が始まってからもそのままツリーが出しっぱなしだったり・・・しまうのが面倒なのでしょうか?それとも綺麗だから、すぐにしまってしまうのはもったいないと思うのでしょうか?単にこの件に関しては何も考えていないだけかもしれませんし(笑)真偽はわかりませんが、日本ではありえない光景で、つい笑ってしまいます。
いずれにしても、六年前当時から一部の人は、「クリスマスに美味しい夕食を食べる」くらいの意識があるようでしたが、クリスマスケーキは浸透していず、サンタクロースのエピソードもあまり認知されていない様子でした。
では、ここからは近年の中国におけるクリスマスの光景をご紹介していきますね。(あくまで私が住んでいる中国広東省の広州市、私の生活圏内に関してのお話です。すべての中国人が同じような感じ方かはわかりませんよ。)
近年の中国におけるクリスマス
近年特に今年から、広州市ではクリスマスに対する見方が変わったのか、例年になく大々的にクリスマスグッズを販売したり、クリスマスの特売セールについて宣伝したりし始めました。主に商業的な意味でですが、クリスマスの認知度を上げてみんなにいっぱいお金を使ってもらおう!という気合いが感じられます。
中国人のある友人が言うには、彼女の会社では今年から社内で同僚同士のクリスマス会の企画が持ち上がっているそうです。会費制の立食式パーティとカラオケになりそうだと言っていました。今まではずっと社内でのクリスマスイベントはなかったんですね。

クリスマスグッズがびっしりの店内。
今回ご紹介する写真の大部分は、広州地下鉄二号線の海珠広場駅(中国語:ハイジューグァンチャン駅)のすぐ脇にある卸売市場で撮影したものです。卸売市場にも色々と種類があって、ここは靴の卸売りとか鞄の卸売り、子ども用オモチャの卸売り市場なんかもあったりするんですよ。
その中に、祝祭日グッズ専門の卸売り店が何軒かかたまっていました。ちょっと覗いてみた所、今の季節は文字通りクリスマスグッズ一色となっていましたよ。街中でもクリスマスグッズは販売されていますが、ここは特別すごかったです。

とっても華やかな店内です。クリスマスグッズしか売っていませんね!
何軒ものお店の店内が完全にクリスマスグッズのみだったので、他の季節はどうしているのか店員さんに聞いてみると、「大きな倉庫があるから大丈夫だ」とのことでした。クリスマスが過ぎたら、クリスマス関連グッズを全部倉庫にしまって今度は旧正月グッズを売り始めるということですね。
なるほどとは思いましたが、そうなると、ここに売られている物はもしかしたら去年や一昨年に売れ残った物なのかな・・・?という疑念も生まれてしまいますね(汗)
どこのお店も大体同じような物を販売していたので、恐らくほとんどは今年の物じゃないかなと思いましたが、その辺りは営業妨害になってしまったら申し訳ないので踏み込んで聞けませんでした。謎ですね。
そのことを問題にしなければ、卸売市場は比較的値段が安く設定されていますし、プレゼント用などで大量買いすれば値引き交渉も可能ですから、お買い物には良い場所ですよ。私が見た限りでは、小物であれば1個10元(日本円で約170円*)程度の物もたくさんありました。
ただ、卸売り店の中には10点以上のまとめ買いでないと売ってくれないようなお店もそれなりにあるので、お買い物の際には最初に確認しておいた方がいいですよ。

こちらはマックカフェのクリスマス用の宣伝です。
以前はあまり見かけなかった光景ですが、今年はマックカフェだけでなく、多くのレストランやコーヒーショップなどでクリスマスの時期だけのセット商品などが販売されています。中国でもやっとクリスマス商戦が始まったんですね。
ちなみに、写真のマックカフェのカフェラテは21元(約358円)ですね。さすがマックカフェ、ちょっとお高めですが、とっても可愛いカフェラテとなっています。(「写真はイメージです」というケースがかなり多いので、本当にカフェラテにスノーマンが描かれているかどうかはわかりません。)
もう一つ気になったのが、「姜餅風味」となっている点です。生姜風味ということでしょうか・・・?確かに生姜は体が温まりますけど・・・私はちょっと試してみる気にはなれませんでした。
■やっぱり見つかるちょっと変な物
中国ではニセモノだけでなく、ちょっと変な物もたくさん見かけます。基本的にオールジャンルで変な物は存在するんですが、クリスマスグッズを販売するこの卸売市場でも、やっぱりありました!

クリスマスだからトナカイ・・・かと思いきや、よく見たらこれはもしかしてキリン?!
クリスマスツリーの下にたくさんのプレゼントと一緒に埋もれているのは、当然ながらトナカイさん・・・かと思いきや、よく見たらこの体の模様は、キリン?!(笑)何を間違ってここにキリンが来てしまったのか??ここ中国では、こういう「謎なこと」「変なもの」に遭遇するのは日常茶飯事なんです。
ざっと見渡した所、こちらのお店の他の動物は全てトナカイでした。ちゃんと間違いなくトナカイだったのに、どうして一頭だけキリンになってしまったのか、本当に謎です。
また写真には収められませんでしたが、すごく大きくてリアルなトナカイが何頭かありました。一般家庭に収まるような大きさではなかったので、恐らくホテルのロビーなどに置かれる物なのでしょう。それにしても、その目にギロッと睨まれたら、子どもたち泣き出しちゃうんじゃないかなと思いましたよ。

クリスマスツリーと福の字の飾り物。
この辺りでは、上の写真のような光景も珍しくありません。私としては「クリスマスツリーの上に赤いちょうちんって・・・」と思いますが、こちらの人はたぶん何も思わないのでしょう(笑)きっと縁起物の福の字の赤いちょうちんは年中ここに飾ってあって、ツリーは今だけなのでしょう。こういうこだわりがないんですよね、こちらでは。
ところで、中国語でクリスマスは「圣诞节(聖誕節)」と言います。イエス・キリストの生誕を記念してという意味でこの漢字を当てたのでしょうね。発音は「ションダンジエ」です。
クリスマスツリーは「聖誕樹(ションダンシュー)」という名前が当てられていますが、みんなこの木が「もみの木」という種類の木だという認識はないようです。実際にもみの木を指す中国語はあるのでしょうが、クリスマスツリーとして使われていようがいまいが、中国人はこの木は聖誕樹だと言います。
またこの機に、中国人の友人に「トナカイって中国語で何て言うの?」と聞いてみました。ちょっと予想していたことではあるのですが、友人は真顔で「聖誕鹿(ションダンルー)だよ。」と答えました。「クリスマスじゃない時は聖誕とは関係ないでしょう~(笑)」と心の中で思いましたよ。
ちなみに、辞書で調べるとトナカイは「驯鹿(シュンルー)」となっていました。やっぱり中国人はこういう所が適当なんですよね。恐らく、ここ数年でクリスマスが流行り出して初めてトナカイという動物の存在を知ったのでしょう。ですから、クリスマス関連は全部「聖誕○○」となってしまうようです。
■中国版サンタクロース?どこか違う気がする中国のサンタさんとは?
日本だったら、この時期子どもたちは「サンタさんのプレゼント何にしよう?早くしないとサンタさん国を出発しちゃうよ。」とか、「オレはもうサンタさんなんかいないって知ってるよ。あれはパパなんだから。」みたいな会話をしているんじゃないでしょうか。
今の中国の子どもたちが、どの程度サンタクロースの物語について知っているかはわかりません。少なくとも、私が知っている中国人の友人宅のお子さん数人に関して言えば、特にクリスマスを楽しみにしている風はありませんでした。
みなさんもそろそろ予想できることかもしれませんが、中国語でサンタクロースは「聖誕老人(ションダンラオレン)です。そのままですが、「クリスマス老人」「クリスマスお爺さん」ですね。クリスマスソングの歌詞の影響からか、私はてっきりサンタクロースは「おじさん」だと思っていましたが、中国では完全に「お爺さん」扱いされているようです(笑)

リアルサンタが店先で迎えてくれます。
海珠広場の卸売市場には、上の写真のようなサンタが何体も並んでいました。無駄にリアルなだけでなく、こちらくねくねと謎の動きをするリアルサンタです。個人的な感想としては、かなり不気味でした。これを見た子どもたちが、サンタに対して良い感情を持てるのか疑問に思ったのは私だけでしょうか・・・?

一番左は、黄金の衣をまとった成金リアルサンタ!?
ほのぼのしたスノーマンと比較的可愛らしいサンタ人形・・・ここまでは悪くないのですが、それらと一緒に並んでいるのは、キラキラと輝きを放つ成金サンタクロース?是非、右の二体のような雰囲気でまとめてくれるといいんじゃないかなと思いました。

ちょっと変わった服を着てサックスを奏でるリアルサンタ。
こちらは赤とグレーの一風変わった衣をまとったリアルサンタです。理由はわかりませんが、ここにあるかなり多くのリアルサンタは皆サックスを吹いています。上の写真でも、よく見るとリアルサンタの奥、二軒先の店先でもリアルサンタがサックスを吹いているのが見えますね。
それぞれのお店で、洋服や表情が少しずつ違ったサンタが買い物客を迎えてくれます。サンタクロースとサックス・・・何かそういったエピソードがあるのでしょうか?ちなみにサックスサンタはすべてくねくねゆらゆらと微妙なステップを踏んで動いています。どれも不気味としか思えません(笑)

サンタの隣にたたずむ若い女の子は...?
私には不気味としか思えないリアルサンタたちも、中国人たちの目には違って映るようです。その証拠が、次の写真です。

リアルサンタと記念撮影したかったんですね!
中学生か高校生くらいのお年頃の女の子が、わざわざリアルサンタと並んで記念撮影をしています!怖くないのでしょうか(笑)人によって、もしかしたら国によって同じ物を見ても感じ方が違うのでしょうね。
このリアルサンタだって、サックス持ってゆらゆら揺れているんですよ。もしクリスマスの飾りが綺麗だと思ったのなら、私なら確実にサンタが入らない角度で写真撮影しますね。
「なんちゃってクリスマス」も受け入れる広い心が大切ですね

謎のクリスマス用ウォールステッカーを使用するレストラン。
いかがでしたか?同じアジアのお隣の国でも、クリスマスに関しては歴史や見方、思い入れや知識など様々な面で日本と中国には違いがありますね。
この時期にレストランではしきりにクリスマスセットを宣伝していますが、そのほとんどがステーキやハンバーグなどの肉系です。(チキンもありますけど、多くありません。)まぁ「この機会に美味しく洋風料理を食べよう」という緩いくくりのようです。
きっちり正式にクリスマスをやりたい!という方にはあまり向いていない場所かもしれません。対照的に、「なんちゃってクリスマスも面白くていいね!」と思えるような広い心を持っていれば、文化や考え方の違いを楽しんで過ごすことができますね。これからも、日中の違いを楽しんで生活し、レポートしていきたいと思います。
*この記事内のレートは全て2017年12月現在のものです。
中国広東省広州市に住む30代主婦です。今の目標は広東語をマスターすること!大好きな広州を、楽しく詳しくレポートしていきます★