【サラゴサ】スペインで一番たいせつな聖母ピラールのいる大聖堂でゴヤの絵を見る

【サラゴサ】スペインで一番たいせつな聖母ピラールのいる大聖堂でゴヤの絵を見る

スペインの観光でなんとなく、行きそびれてしまうサラゴサですが、サラゴサにはスペイン人にとって一番重要な聖母がまつられた大聖堂があります。スペインの3大聖所は、サンティアゴ・デ・コーポステラの大聖堂とサラゴサのヌエストラ・セニョーラ・デル・ピラール聖堂、そしてアンダルシア、ロシオの礼拝堂です。


サラゴサにあるヌエストラ・セニョーラ・デル・ピラール聖堂

夕方の光で美しい聖母ピラール大聖堂

ヌエストラ・セニョーラ・デル・ピラール聖堂は正式名、Catedral-basílica de Nuestra Señora del Pilar de Zaragoza(カテドラル−バシリカ・デ・ヌエストラ・セニョーラ・デル・ピラール・デ・サラゴサ)です。もちろん、道をきくときはカテドラル・デル・ピラール(聖母ピラール大聖堂)でちゃんと通じますが。

ゴヤの時代:聖母ピラール大聖堂とゴヤの関係

ピラールにささげられた聖堂だけに、女性的なデザインの建物です。

ゴヤ(1746〜1828)はサラゴサ県フエンデトドスというサラゴサに近い町に生まれました。1772年にピラール大聖堂のフレスコ画を描きました。2枚描いたところで、次のものを描く前に少し手直ししてからと言われ、ゴヤは手直しの必要を感じず、もしこのスタイルが嫌ならもうこれ以上は描けないと言ってピラール大聖堂での仕事をやめてしまいました。

それはサラゴサにとっても不幸なことでした。もし、ゴヤが全てのフレスコ画を描いていたら、このピラール大聖堂はもっと価値あるものになっていたでしょうから。ゴヤは「着衣のマハ」、「裸のマハ」「黒い絵( Pinturas negras)」など、当時としてはかなり斬新的な画家でした。そのために、ピラール大聖堂の司教たちには、彼のスタイルがまだ理解できなかったのですね。

ただ、少なくとも、ゴヤの描いたものを修正せず、そのまま残していることは不幸中の幸いでした。ちなみにピラール大聖堂のステンドグラスはゴヤの父親の作品だそうです。


ナポレオンの時代:ナポレオンの攻撃にもビクともしなかった聖母ピラール大聖堂

いくつか穴が見えます。これは銃撃のあとです。

ナポレオンがスペインもフランスと同じように貴族たちを排除し、新しい時代を作るために攻め入りました。新しい時代を望む人たちが、ナポレオンを支持していました。しかし、スペイン勢が強く、また、新時代を望む状態ではなかったようです。私が住んでいるアンダルシア、北部ハエン県のカソルラにもナポレオンが攻めてきた跡があります。サンタ・マリア教会が半分壊れた形で残っています。リフォームせずに、ナポレオンが攻めて来たときに、果敢に戦ったのだという思い出をそのまま残しているのだそうです。

それと同様に、ピラール大聖堂の外壁にもナポレオン軍の撃った跡が残っています。穴が空いたままにしているので、その部分の石がだんだん退化して、落ちそうになっているので修復したそうなのですが、穴をふさぐのではなく、穴の周りを強化して、ナポレオンの思い出はしっかり残しています。

市民戦争の時代:爆弾も不発にした聖母ピラール大聖堂

聖母ピラール聖堂の広場。遠くにもうひとつのカテドラル、ラ・セオ(サン・サルバドール大聖堂)が見えます。

スペインの市民戦争は、アーネスト・ヘミングウェイの「誰がために鐘は鳴る」で有名になりましたが、実際のところ市民戦争ってなんだったのか、外国人にはわかりにくいのではないでしょうか。今でも、バスク地方やカタルーニャ地方の独立などが話題になりますし、バレンシア、アラゴン、アンダルシア、それぞれに独自の文化があり、それぞれの主張は、日本における関西以上に強いのです。

そういう自治州の独立運動かというと、州単位ならまだしも、ムルシアの千人くらいしか人がいない村がいきなり独立宣言したり、スペインって本当に両極端な国です。スペインはカトリック信者の国ですが、市民戦争は社会主義グループの主張も激しく、大量の修道士や修道女が殺戮(さつりく)されました。

爆破された場所が十字架の形ということですが、壊れないように、形が変わらないように十字架の形のタイルが貼り付けてあります。

もちろん、そのとき、この聖母ピラール大聖堂も標的になり、3本の爆弾が投げられました。1本は、道で爆発し、石畳に十字架の形の穴が残り、2本は聖母ピラール大聖堂の内部に投げ込まれたのですが、不発で、今も聖母ピラール大聖堂内部の壁に飾られています。3本の爆弾が聖母ピラール大聖堂にほとんど被害を与えなかったことで、サラゴサ市民の信仰はより篤いものになりました。今でも大聖堂の壁に不発になった2本の爆弾が飾られています。

しかし、考えるのですが、こういうどこかがせめて来たり、爆弾とかそういうのをそのままたいせつに保存するという考え方ってやはり欧米的なんでしょうか。日本では、原爆ドームを保存していますが、実は取り壊すことも考えられていたようです。丹下健三さんが、平和公園を設計するときに原爆ドームも含めた形でデザインしたので取り壊すことなく、保存されるようになったということですが、原爆ドームを見ながら「アメリカが」という感情はないような木がするのですが、どうでしょう。

聖母ピラールはスペインでもっとも重要な聖人のひとり

ここで日曜日のミサが行われます。

キリストの12使徒のひとり聖大ヤコブが現在のサラゴサ当たるカエサラウグスタのエブロ川のそばで悲嘆して座っているところに、聖母マリアが柱の上に現れたという奇跡が起きたことから、聖母ピラール(柱という意味)信仰が始まります。

そして、この柱のあったところに教会を建造し、少しずつ改築していき今のような聖母ピラール大聖堂ができあがりました。そして、柱が現れたのが10月12日と言われています。yヤコブの前に聖母が現れたのが10月12日だったからです。国の祝日にもなっている大切な日です。この日に生まれた女の子はほぼみんなピラール(Pilar)と名付けられています。私自身の友人にも、なんと3人の同じ誕生日のピラールがいます。そんなに12日に集中して生まれてくるものなのかと疑問なのですが。

ヌエストラ・セニョーラ・デル・ピラール聖堂の建築様式

このとんがり屋根が遠くからもよく見えます。

聖母ピラール大聖堂の建築様式も他の多くのスペイン(もちろんスペインだけではなく、他のヨーロッパの)建築物と同様、長い時間をかけて作られているので、様式がミックスされています。レコンキスタが終わった頃から少しずつ建造されていたのですが、1434年に火災があり、損傷してしまいました。その後、ゴシック様式、ムデハル様式、そして、バロック様式で改築していきました。18世紀にはさらに拡大し、塔も増えていきました。現在、11個のドーム型の屋根には緑、黄、青と白のタイルが貼られて、遠くからも不思議な雰囲気を醸し出しています。

唯一残っているロマネスク様式

ロマネスクとはスペイン語ではArte románicoと呼ばれ、ゴシック様式が出る以前のスタイルです。音楽の世界でもポリフォニーが確立されていなかった時代なので、天井も柔らかい曲線で、ポリフォニーができたゴシック様式よりエコーを考えていない造りになっています。

ゴシックというのは、「カブキ」に近い意味合いで、ロマネスクに比べて奇異なものをさしていましたが、今ではゴシックもクラシックの建築の一つになってしまいました。

ヌエストラ・セニョーラ・デル・ピラール聖堂への入場

日曜日ということもあって、入り口には列ができていました。

ヌエストラ・セニョーラ・デル・ピラール聖堂は入場無料です。モニュメントというより、教会として使われているので、ミサなど信者の利用が優先的ですから、日曜日など入れないところもあります。内部は撮影禁止です。私はトリップクリップの取材ということで特別に許可を得て撮影しています。

この記事のライター

スペインに住んで18年になります。小さな素敵な町やお祭り、工芸品などスペインらしいスペインの旅を楽しむ情報をお届けします。

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