G'day, mateにまつわる真実
何かとネタにされやすいオーストラリア英語。筆者はシドニーに移り住んでもうすぐ満8年になりますが、来たばかりの頃はこちらの人と話していて「ん?今何て。。。?」と思う場面が多々ありました。タイトルに上げた三つの単語を全て知っている方は、なかなかのオージー英語上級者ではないでしょうか。
有名どころのG'dayなどは、実のところシドニーの日常生活ではほとんど聞きません。使っているのは、都市部から離れた田舎出身の気さくなお兄さんが多いように思います。あまり女性らしい響きではないのか、女性はほとんど使いません。少なくとも、筆者のオーストラリア人の友人には使う人は皆無です。挨拶に聞くのは「How ya goin'?」「How's it going?」の方がずっと一般的です。
もう一つの定番、mateの登場頻度はそこそこといったところでしょうか。この言葉を使用するのはほぼ男性のみで、男性友人同士の会話、父親またはサバサバした感じの母親が息子に愛情を込めて呼ぶ時、また男の子に「let's go, mate」と促す時などによく聞こえてきます。mateと呼ばれるのはたいてい男性で、女性に向かって使われたのを聞いたことはありません。
ガイドブックなどに載っているオーストラリア英語というのは、やや田舎っぽくてあまり洗練されたイメージがないのか、シドニーにゴロゴロいるちょっとプライドの高いマダムや気難しい中年男性はまず使いません。移民二世と一緒に育ってきた若い世代も国際化慣れしているせいか、独特のオーストラリア・アクセントはあっても標準的でわかりやすい英語をしゃべります。
筆者はニュージーランドに留学していた頃、米国から同じく留学に来た友人が行きの飛行機の中で生粋のキウィと席が隣同士になり、とにかくそのキウイが口を開く度に「I'm sorry, what?」と聞き返さなければならず本当に気まずい思いをしたという話を聞いて、英語が母国語でも鈍りが強い人にいたってはそんなに聞き取れないものなのか!と衝撃を受けたのを覚えています。
こういうネタで、よくオーストラリアはニュージーランドのことをからかうものです。確かに、オーストラリアの英語の方が格段に聞きやすいのは事実です。
多少脱線してしまいましたが、これからオーストラリアへ留学予定の学生さん、駐在予定のご家族、とにかくオーストラリアの英語に興味があるという方のために、誰でも使えるオージー英語のスラングをまとめて紹介します。
お断り:オージーの口語表現を本気で掘り下げると、過激な放送禁止用語や罵りの言葉、オーストラリア人でも耳を塞ぎたくなるものがわんさか出てきますが、ここでは筆者がシドニーの日常生活で実際に聞き使う、健全な単語・口語表現を集めました。また、他の州では異なった単語や言い回しが好まれる場合がありますのでご了承ください。
食べ物・飲み物
Avo(アヴォ): アボカドのことです。smashed avo on toast (つぶしたアボカドをトーストに乗せたもの)はオージーのお気に入りメニューの一つです。複数形はavos。
Barbie(バービー):これは有名ですね。バーベキューの略です。金髪のお人形バービーと全く同じスペルですので紛らわしいですが、こちらでこの単語を耳にしたらバーベキューのことだと思って間違いないでしょう。
Bikkie(ビッキー):ビスケットをおちゃめにこう呼びます。人によってはBiccyと綴ることも。ちなみに、Chocolateはchokkieになりますので、チョコレートビスケットはチョッキー・ビッキー。さらに余談になりますが、Victoriaという名前の女性のニックネームはよく「ヴィッキー(Vicki、Vikkiなど)」になりますので、BとVはお間違えなく。
Brekkie(ブレッキー):Breakfast(朝食)の略。これもわりと有名ですね。
Fairy floss(フェアリー・フロス):子どもが大好きな綿菓子のことです。アメリカでは「Cotton candy」ですね。コットンもフェアリーもふわふわした綿菓子の質感をよく表していますが、筆者はオーストラリア版の呼び名の方がメルヘンチックで、一枚上手のように感じます。しかし、「floss」は歯の糸ようじの意味もありますので直訳したら「妖精の糸ようじ」。アメリカ人からしたらこういう俗語は思わず笑ってしまうものなのでしょうか。
Lollies(ローリーズ):アメリカ英語の「candy」と同意語、こちらのスーパーに売っている、目の覚めるような原色のグミやリコリスなど、甘いお菓子をひっくるめて呼びます。棒付きのぺろぺろキャンディーはlollipop。
Chippies(チッピーズ):ポテトチップスのことです。フィッシュ&チップスのチップスも同様にチッピーズと呼ばれるので少々紛らわしいですね。

チッピーズとローリーズ。
Prawn(プローン):イギリス英語と同様、エビはshrimpではなくprawnと呼びます。中華料理屋でよく出てくるエビクラッカーのこともprawn crackersといいます。
Macca's(マカーズ):マクドナルドの愛称。愛称だけだと思っていたら、正式に登録商標されてマクドナルドの公式アプリの名前にまで使われていました。

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コーヒー・お茶
Flat white(フラット・ホワイト):エスプレッソにこれでもかと細やかに泡立てたスチームミルクを注いだコーヒー。比率はエスプレッソ1/3、スチームミルク2/3といったところ。
Long Black(ロング・ブラック):お湯にダブルショットのエスプレッソを注いだコーヒー。ちなみにShort Blackは普通のエスプレッソのことを指します。
Babychino(ベイビーチーノ):どこのカフェのメニューにも必ずある、子ども用のなんちゃってコーヒー。スチームミルクにココアパウダーを振りかけたものが一番一般的です。これだけでお金を取るのも心苦しいのか、たいていクッキーやマシュマロがついてきます。ごく稀に無料でベイビーチーノを出してくれるお店もあります。
Cuppa(カッパ):Cup of teaの略です。イントネーションは河童と同じではなく、かば(2文節目が下がる)に似ています。イギリス英語でもガンガン使われます。「うちにお茶飲みに来ない?」は「Would you like to come over for a cuppa?」でOK。

フラット・ホワイト。オーストラリアのコーヒーは本当に美味しいです。それほどのコーヒー好きでなかった筆者もすっかり虜になりました。
夏の必需品
Cossie(コズィー):水着のこと。ビーチ大国のオーストラリアには水着を指す単語(bathers、swimmers、togs、trunksなど)がたくさん。オーストラリア発祥の水着ブランド「Speedo(スピード)」は男性用水着の代名詞でもあります。
Sunnies(サニーズ):サングラスの略。
Thongs(トングズ): ビーチサンダルのこと。サンダルなので複数形ですが、紛らわしいのがアメリカ英語でこの単語の単数形「a thong」はTバックのことなのです(オーストラリアでの呼び名はG-string)。使う時は必ず複数形にすることを忘れないようにしましょう。間違えそうで不安であれば、flip flop(フリップ・フロップ)でも通じます。
Icy pole/Ice block(アイスィー・ポール/アイスブロック):アイスキャンディー。砂糖水を凍らせた夏の定番おやつです。

冷凍庫コーナーに並ぶアイス・ブロック各種。
場所
Straya(ストラーヤ):オーストラリアのことです。「Straaayah」と言っているように聞こえます。怠惰なオージーはAu-stral-iaの3文節をきちんと発音せず、愛情を込めて自分の国をこう呼びます。「Happy Straya Day(オーストラリア・デイ、おめでとう)!」
Tassie(タズィー):タスマニア。
Brizzie (ブリズィー):クイーンズランド州都のブリズベン。クイーンズランド州は「Sunshine State」と呼ばれ、クイーンランド州の車のナンバープレートにも表記があります。
Down under(ダウン・アンダー):こちら人の発音では「ダウナンダ!」といったところでしょうか。オセアニア地域、主にオーストラリアとニュージランドを指す口語表現です。北半球にある多くの国から見ると、南半球が「下に」あることからこう呼ばれるようになったとか。「down」も「under」も下を指す単語ですから、「下のもっと下」ですね。
Outback(アウトバック):ステーキハウスで有名な単語ですね。都市部から遠く離れた、人口が極端に少ない広大な奥地のことを指します。
Oval (オーヴァル):スポーツゲームが行われるスタジアム。ラグビーやクリケットの試合場を指す場合が多くあります。夏場にアウトドアシネマが開催されるのもここです。
Woolies(ウーリーズ):オーストラリアの2大スーパーの1つ、ウールワースの略。ライバルはいつでもColesです。
Chemist(ケミスト):ドラッグストアのこと。薬局の枠を超えて、おもちゃ、帽子、靴なども売っています。
Uni(ユニ):University(大学)の略。
Flat/Unit(フラット/ユニット):アパート、またアパートの一室のこと。ルームメイトのことはflat mate(フラット・メイト)と呼ぶのが一般的です。

アウトバックのアイコンといえば、ウルル。
人・動物
Roo(ルー):カンガルーのことを愛着を込めてこう呼びます。ちなみにサッカーのオースラリア代表は「Socceroos(サッカールーズ)」。
Joey(ジョーイ):カンガルーの子ども。有袋類の赤ちゃんの総称でもあります。
Mozzie(モズィー):Mosquitoの略、蚊のことです。蚊に刺された時は「I got a mozzie bite」、蚊よけスプレーはmozzie sprayで通じます。
Bloke(ブローク):「guy」や「man」の同意語で、イギリスやニュージランドは単に男性を指す使われる単語として使われます。ここオーストラリアでも同様ですが、さらに突っ込んでオージー特有のマッチョな男らしさの典型として、誇りをもってよく使われます。「Aussie bloke(オージー・ブローク)」と言えば、ビーチとビールとバーベキューをこよなく愛するオーストラリア男性。国のアイデンティティーを意識して使われる言葉です。
Love(ラヴ):「mate」に用法は似ていますが、対象は女性です。また、女性から男性に対しても使われます。スーパーのレジのおばさんなんかはよくお客さんに「Hello, love」と言っています。筆者もよく、郵便配達のおじさんにloveと呼ばれます。
Bub(バブ): 赤ちゃんのことです。「bubba(ババ)」ともいいます。
Littlie(リトリー):幼児や、小さな子どものこと。
Aussie(オーズィー):オーストラリア、オーストラリア人の略。Ozとも綴ります。オージービーフの登場でこの呼び名を聞いた人も多いのでは。お隣のニュージーランド人はKiwiですね。果物のキウイは「キウイフルーツ」とフルネームで呼んであげないと、ニュージーランド人のことだと間違えられてしまいますので気をつけましょう。
挨拶
Have a good one(ハヴ・ア・グッド・ワン):「Have a good day」に代わってよく使われる表現。午前中に限らず、さよならを言いたい時に一日中いつでも使えます。
Cheers(チアーズ):「乾杯」の意味の方が有名かもしれませんが、オーストラリアではthank youの同意語としてお礼を言う場面で使われます。最もポピュラーな組み合わせは、「Cheers, mate!」。
Hip hip hooray(ヒップ・ヒップ・ホレーイ)!:この表現が一番よく使われるのは、バースデーソングを歌い終わってすぐ。誰か一人の「ヒップヒップ!」の掛け声に残り全員が「ホレーイ!」と返します。オージーはわりと早口なので、Hip hipの発音はまるで一語のように「ヒッピッ!」に聞こえます。
No drama(ノー・ドラマ):有名なNo worriesと同じ意味の表現。同じくらい頻繁に使われます。No problemとも同意語です。
生活必需品
Footy(フティー):オーストラリアの国技、ラグビーのことを指します。オージーはとにかくラグビーが大好き。好きすぎてラグビーを極めた結果、4種類に分かれました。ラグビー・ユニオン、ラグビー・リーグ、AFL(オーストラリアン・フットボール・リーグ)、そしてタッチ・フットボール。筆者には違いが全く分かりません。
Telly(テリー):テレビの略。
Foxtel(フォクステル):有料ケーブルテレビの名称。Footy観戦には欠かせません。
Bin(ビン):ゴミ箱のこと。ゴミのことは「rubbish(ラビッシュ)」ゴミ箱はrubbish binとも呼ばれます。
Esky(エスキー):クーラーボックスのこと。ブランド名だったものが転じて、クーラーボックスそのものを指すようになりました。ブランド名はエスキモーに由来するという説が一番根強いのだそうです。キャンプ、ビーチ、バーベキュー、飲み会に大活躍のアイテムで、オージーのエスキー依存度は非常に高いです。

一家に一台、エスキーです。
会話に役立つ表現
Arvo(アーヴォ):afternoonのこと。「じゃ、今日の午後ね」と言いたい時は「See you this arvo」で大丈夫です。
Catch up(キャッチ・アップ):しばらく会っていない(またはゆっくり話をできていない)友達と久しぶりに会っておしゃべりなどをすること。発音は「ケチャップ」に近いです。名詞でも動詞でも使えます。
Far out(ファー・アウト):驚きの気持ち、迷惑や不満に思う時に使う間投詞。「マジで!?」に近いニュアンスですが、あまりポジティブな意味では使われず、スラング度も高いです。
Flat out(フラット・アウト):ものすごく忙しいこと。「I've been flat out with school work(学校の勉強でものすごく忙しいんだ)」
Heaps(ヒープス):a lotやvery muchの代わりに使います。お礼に使うなら「Thanks heaps!」、風邪をひいていた人に「調子どう?」と聞くと「heaps better(だいぶ良くなったよ)!」と返ってくることも。
Whinge(ウィンジ):グダグダといつまでも文句を言うこと。「whine」と同意語です。こちらのママがよく子どもに「stop whingeing!」と嗜めるのはお約束。いつも不平不満を言っている人のことをウィンジャーとからかったりもします。
Stocked(ストークド):興奮している、ものすごく幸せである様を表します。プロポーズされた女性は「I'm so stocked!!」と叫ばずにいられません。
Reckon(レコン):「Think」の代わりによく使われる動詞です。「I reckon...(私は。。。思います)」と言えば自然に聞こえます。自分の意見を言った後に「You reckon(そう思う)?」と返ってきたりします。
Right(ライト):会話中に、「うんうん、そうだよね」と相槌を打つ時に出てくる単語です。
Bloody(ブラディ):何かを強調したい時に使う形容詞。イギリス英語ですがこちらでも頻繁使用される表現です。ちょっと腹が立っている時、迷惑に思う時、ショックなことがあった時によく使われます。 あまり品の良い言葉ではないので、親しい友人同士でない限りは乱用に注意しましょう。「Look at this bloody mess(何これ、すんげえ汚れてるじゃん)!」
その他まだまだあります
Prezzie(プレズィー):プレゼントの略。
Chrissie(クリスィー):クリスマスの略。クリスマスプレゼントはchrissie prezzieです。
Bubbler(バブラー):公園などにある水飲み場のこと。州によってはdrinking fountain、water fountain、drinking tapなど呼び方に差があります。
Schoolies(スクーリーズ):高校卒業間近の生徒たち。11月下旬頃から、国中で泥酔、器物破損、ビーチをゴミで散らかし放題など、羽目を外しまくります。試験が終わった生徒たちが街に繰り出し始める時期をschoolies weekと呼びます。
Walk of shame(ウォーク・オブ・シェイム):前の晩にパーティーで飲んだくれた後外泊し、翌朝に前日と同じ洋服で外を歩いていること。ハリウッドのウォーク・オブ・フェイムとかけています。土曜の爽やかな朝などにちょっとおしゃれなイヴニング・ドレスやスーツを着て、ちょっとボサボサの髪で街を徘徊している若者がいたら、「they're doing the walk of shame」とおちょくります。オージー英語ではありませんがこちらの若者文化に深く根付いた言葉なので紹介しました。
Anzac(アンザック):the Australian New Zealand Army Corps(オーストラリア・ニュージーランド軍団 )の略称です。アンザック軍がトルコのガリポリに上陸したことに由来し、毎年4月25日は戦没者を追悼する日、アンザック・デーに制定されています。第二次世界大戦後は戦争に参加した全てのオーストラリア兵士のための記念日となりました。
シドニーの郊外にはあちこちに戦没者慰霊碑があり、黙祷している兵士の像が上に立っています。アンザック・デーの夜明けにはここで慰霊式が行われます。シティの外れにはやはり戦没者を追悼したアンザック・ブリッジ、転じてアンザック・ビスケットというおやつもあります。

戦没者慰霊碑。
最後はSelfie(セルフィー):説明の必要はありませんが、自撮りのことです。この単語、何を隠そうオーストラリア発祥です。セルフィーと呼ばれる以前の名前を思い出せないくらい、今や世界の共通語になりました。
彼らの使う口語表現のなんと多くが略語であることでしょう。怠惰で適当だけど憎めない、常にぬくもりとユーモアを忘れず、自虐とおちゃらけが大好きなオージー。会話中に分からない単語や表現があったら、「What's that, sorry(今、何て言ったの)?」と聞いてみて下さい。きっと誇りに満ちた顔で解説してくれるでしょう。
Cheers!
ニュージーランドとシンガポールでの生活を経て2009年よりシドニーに居住しています。7・4・2歳の子育て中です。